STAFF NOTE 02 / PART I からだの土台 / 3段階解説

固有覚ってなあに?— こゆうかく/Proprioception —

一つのテーマを レベル1(やさしく全容)/レベル2(深く実践的に)/レベル3(専門的・次へつなぐ) の3段階で。 各レベルに 療育的アプローチ を併記し、概念と現場をつなぎます。
LEVEL 1 固有覚は「自分のからだの地図」をつくる感覚 小学生・保護者向け/全容ざっくり

かんたんに言うと

固有覚は 「自分のからだが今どこにあって、どう動いているか」を感じる感覚。 目をつぶっても自分の手の位置がわかるのは、固有覚が働いているからです。

情報は 筋肉・関節・腱 から脳に届きます。
力の加減がわかる(強すぎ・弱すぎを調整)
姿勢を保つことができる
「自分のからだ」のイメージがつくられる

ぎゅっと抱きしめられると安心するのも、押す・引く遊びが楽しいのも、ぜんぶ固有覚の働き。

療育アプローチ① たっぷり「動く」体験を

固有覚は 使えば使うほど育つ 感覚。

  • 押す・引く・ぶら下がる・ジャンプする遊び
  • 抱きしめ・ぎゅっと圧をかける関わり
  • 「強く・弱く」「速く・ゆっくり」を言葉で添える
  • 叱るより前に「からだに気づく機会」を増やす
LEVEL 2 「力加減のなさ」は固有覚のサイン スタッフ・支援者向け/現場で活かす

気づきたいサインと機能

固有覚は 姿勢保持 力加減 ボディイメージ 覚醒調整 の土台。鈍麻・過敏どちらでも困りごとが現れる。

こんな様子に出会ったら:

  • 筆圧が強すぎる/弱すぎる、物をすぐ壊す・落とす
  • 姿勢がぐにゃっとする、寄りかかってくる
  • ぶつかりやすい、人との距離が近すぎる
  • 噛む・押しつける・狭い所に潜るなどの感覚探索
  • 動いている方が落ち着く、座って待てない

療育アプローチ② ヘビーワークと体操コース

Heavy Work=筋・関節に明確な負荷をかける活動が中心。

  • 運ぶ・押す:重いボール、マット運び、雑巾がけ
  • マット:くま歩き・あざらしで全身に体重をかける
  • ボールプール:埋もれる=深部圧迫で覚醒を整える
  • バランスボード:足裏・足首から多くの固有覚入力
  • ラダー・ジャンプ:着地の衝撃が大きな入力源
  • パニックの前兆に「ぎゅっと圧」を提示できる関係性を作る
LEVEL 3 感覚統合理論における近感覚としての位置づけ 専門職・OT/PT連携/次へつなぐ

受容器と神経基盤

筋紡錘筋の長さ・伸長速度を検出
ゴルジ腱器官筋の張力を検出
関節受容器関節角度・圧を検出

求心性入力は 後索-内側毛帯路 を上行し、小脳・体性感覚野・頭頂連合野で統合される。 前庭覚触覚と並ぶ 近感覚(near senses) として、 A.J. Ayres の感覚統合理論で姿勢・運動企画・自己調整の基盤と位置づけられる。

臨床的には 感覚モジュレーション障害(鈍麻/過敏/探求)と 感覚識別障害(dyspraxia, ボディスキーマ未熟)に分けて評価する。

療育アプローチ③ 評価と連携の視点

  • Sensory Profile / JSI-R 等で プロファイル把握
  • Heavy Work / Deep Pressure を Sensory Diet として日課化
  • 運動企画(praxis)困難児には 分解→組立ての活動分析
  • TEACCH構造化と相性◎:「ここで・これだけ押す」の視覚化で予測可能な入力に
  • Low Arousal設計:深部圧迫・床座位・包み込む空間は固有覚由来の鎮静作用
  • OT/PT連携指標:両側統合・正中線交差・体幹安定性・抗重力姿勢