STAFF NOTE 10 / PART I からだの土台 / 3段階解説

触覚ってなあに?— しょっかく/Tactile Sense —

一つのテーマを レベル1(やさしく全容)/レベル2(深く実践的に)/レベル3(専門的・次へつなぐ) の3段階で。 各レベルに 療育的アプローチ を併記し、概念と現場をつなぎます。
LEVEL 1 触覚は「肌で世界とふれあう」感覚 小学生・保護者向け/全容ざっくり

かんたんに言うと

触覚とは、皮ふでふれて「あたたかい・つめたい・ふわふわ・チクチク」を感じる感覚。 からだ全体をつつむ、いちばん大きな感覚です。

触覚にはふたつの役割があります。
危険を知らせる(熱い・痛いからすぐ手を引く)
くわしく確かめる(ポケットの中で鍵を手さぐりで見分ける)

ぎゅっと抱っこで安心するのも、ふわふわ毛布が心地よいのも、ぜんぶ触覚のおかげ。

療育アプローチ① ふれあいの土台をつくる

まずは 「ふれられて心地よい」体験 をたっぷりと。

  • 砂・水・粘土・泡など、いろんな手ざわり遊び
  • 子どもが「自分から」ふれられるように見せてから渡す
  • 苦手な感触は無理強いせず、好きな感触から少しずつ
  • ぎゅっと圧をかける抱っこで安心を伝える
LEVEL 2 「さわられるのが苦手」は触覚のサイン スタッフ・支援者向け/現場で活かす

気づきたいサインと機能

触覚は 情緒の安定 手の操作 対人距離 覚醒調整 の土台。過敏でも鈍麻でも困りごとが現れる。

こんな様子に出会ったら:

  • のり・砂・絵の具をいやがる、手をふきたがる=過敏のサイン
  • うしろから急にふれられると過剰に驚く・怒る
  • 服のタグ・帽子・靴下をいやがる、偏食が強い
  • けが・温度差に気づきにくい、口に物を入れる=鈍麻のサイン
  • 人やものにベタベタふれる=刺激を探している

療育アプローチ② 深部圧と体操コース

深部圧は触覚を整える鍵。軽いふれより安心を生む。

  • ボールプール:全身が包まれる深部圧で過敏をやわらげる
  • マット:くるくる巻き・サンドイッチでしっかり圧を提示
  • スカーフ:ふわり落ちる布で「心地よい弱刺激」に出会う
  • フープ:自分の陣地を視覚化し急なふれあいを防ぐ
  • ふれる前に「さわるよ」と予告し、後ろからふれない
  • ぴょんぴの床長尺シート色ゾーニングで対人距離を見える化
LEVEL 3 原始系・識別系の二系統と触覚防衛 専門職・OT/PT/ST連携/次へつなぐ

受容器と二系統モデル

原始系触・圧・痛・温で防御を担う
識別系二点識別・質感の精密判別
深部圧鎮静・覚醒調整に寄与

求心性入力は 脊髄視床路(原始系)と 後索-内側毛帯路(識別系)の二系統で上行し、 体性感覚野で統合される。触覚防衛は原始系優位で防御反応が過剰化した状態とされ、 A.J. Ayres の感覚統合理論で 感覚モジュレーション障害 に位置づけられる。

臨床では 過敏鈍麻二点識別 等の 識別機能を分けて評価し、深部圧(deep pressure) の鎮静効果を介入仮説に据える。

療育アプローチ③ 評価と連携の視点

  • Sensory Profile / JSI-R 等で 触覚プロファイル把握
  • Deep Pressure を Sensory Diet として日課化(軽刺激より鎮静的)
  • Wilbargerプロトコル等は OT管理下で適否を判断し家庭と共有
  • TEACCH構造化:「いつ・どこで・誰がふれるか」を視覚化し予測可能に
  • Low Arousal設計:包み込む空間・素材選定で防御反応の閾値を下げる
  • OT/PT/ST連携指標:手の操作性・正中線交差・口腔過敏と摂食・構音