STAFF NOTE 13 / PART I からだの土台 / 3段階解説

味覚・嗅覚ってなあに?— みかく・きゅうかく/Taste and Smell —

一つのテーマを レベル1(やさしく全容)/レベル2(深く実践的に)/レベル3(専門的・次へつなぐ) の3段階で。 各レベルに 療育的アプローチ を併記し、概念と現場をつなぎます。
LEVEL 1 味覚・嗅覚は「食べていいか」を見分ける感覚 小学生・保護者向け/全容ざっくり

かんたんに言うと

味覚・嗅覚は 「口と鼻でものを感じ取る感覚」。 舌で「あまい・しょっぱい・すっぱい・にがい・うまみ」を、鼻でにおいを感じ、ふたつは いつもいっしょに働いて「おいしさ」をつくる 仲よしコンビ。 鼻をつまむと味がわからなくなるのも、この働きです。

大切な役目はふたつ。① あぶないものを「くさい・にがい」で教え、 ② すきなにおいで気持ちをほっと落ち着かせます。

ミルク なめる やわらかい物 いろんな味 食べられる物が増える

療育アプローチ① 「安心して出会う」体験を

新しい味は こわくない出会い方 から少しずつ。

  • 無理に食べさせず「見る・におう・さわる」から始める
  • 苦手な物は別皿に。皿に乗るだけで「合格」にする
  • 「すっぱいね」「いいにおい」と気持ちを言葉で添える
  • 食卓の強いにおい・大きな音を減らして穏やかに
LEVEL 2 「偏食」は味覚・嗅覚のサインかもしれない スタッフ・支援者向け/現場で活かす

気づきたいサインと読み解き

味覚・嗅覚は 過敏 でも 鈍麻 でも、また 感覚探求 でも、食べ方や行動に表れます。「わがまま」ではなく感覚の個性。

こんな様子に出会ったら:

  • 白い物・同じ物しか食べない、給食室や芳香剤で不機嫌=味やにおいの過敏
  • においをかいでから口に入れる=慎重に確かめている
  • 濃い味・刺激物を好む/なんでも舐める=鈍麻・感覚探求や口腔感覚を求めるサイン
  • 特定の食感で吐き出す=味より口の中の触感が苦手なことも

療育アプローチ② 施設環境と食事支援

「食べられた量」より 「安心して食卓につけた」 を目標に。

  • ぴょんぴの色ゾーニング:食事スペースを床シート色で明示し予測可能に
  • Low Arousal設計:強い芳香・調理臭・BGMを抑え刺激を最小化
  • ボールプール・マット等で食前に固有覚を入れ覚醒を整える
  • 同じ席・同じ食器でTEACCH的に「いつもと同じ」安心を用意
  • 苦手食材は段階表で「見る→近づける→触れる→舐める」と可視化
LEVEL 3 化学感覚・辺縁系・摂食嚥下との接続 専門職・OT/ST連携/次へつなぐ

受容と神経基盤

味蕾5基本味を検出(顔面・舌咽神経)
嗅上皮揮発性分子を検出(嗅神経)
三叉神経辛味・冷涼・口腔の体性感覚

味覚・嗅覚は 化学感覚 と総称され、嗅球 から 辺縁系(扁桃体・海馬)へ直接投射し情動・記憶・覚醒調整 と結びつく。 風味は味・嗅・口腔感覚の統合知覚で 摂食嚥下 の先行期を支え、臨床では 感覚モジュレーション障害(過敏/鈍麻/探求)と 食行動の選択性(ARFID 圏)を区別して評価する。

療育アプローチ③ 評価と連携の視点

  • Sensory Profile 等で口・嗅覚領域のプロファイルを把握
  • SOS Approach to Feeding の 段階的脱感作を Sensory Diet に組み込む
  • 口腔感覚は固有覚・触覚と連動:Heavy Work や深部圧で覚醒を整えてから食事へ
  • TEACCH構造化+Low Arousal:献立・手順を視覚化し、辺縁系直結の環境臭を調整
  • ST/OT・管理栄養士連携指標:嚥下機能・口腔過敏・栄養充足・体重推移