一つのテーマを レベル1(やさしく全容)/レベル2(深く実践的に)/レベル3(専門的・次へつなぐ) の3段階で。
各レベルに 療育的アプローチ を併記し、概念と現場をつなぎます。
LEVEL 1
ことばが出る前から、もう「お話」は始まっている
小学生・保護者向け/全容ざっくり
かんたんに言うと
前言語期コミュニケーションとは、ことばが出る前の「伝えたい気持ち」のやりとり のこと。
泣き声・笑顔・目を合わせる・声を出す・指をさす――こうした行動はすべて、
赤ちゃんからの 立派なメッセージ です。
ぎゅっと抱かれて笑い返す、おもちゃを指さして「見て!」と伝える。
こんな 気持ちの通い合い が、やがてことばの土台になります。
泣く・笑う▸
声を出す▸
目を合わせる▸
喃語▸
指さし▸
はじめてのことば
療育アプローチ① 気持ちの通い合いを育てる
まずは 「伝えたら届いた」という嬉しさ を、おうちでもたっぷり。
- 赤ちゃんの声や表情に すぐ笑顔で応える
- 子どもが見ているものを 一緒に見て言葉にする
- 「あー」に「あーだね」と まねっこで返す
LEVEL 2
「ことばの前のサイン」を読み解く
スタッフ・支援者向け/現場で活かす
気づきたい子どものサイン
ことばが少なくても、子どもは 表情・視線・声・からだ で発信しています。
「伝わらない」のではなく 「別の方法で伝えている」 と読み替えるのが出発点です。
- 大人と物を 交互に見る=関心を共有したいサイン
- 手を伸ばす・引っぱる=「とって」「来て」の要求
- 声の調子が変わる=うれしい・いやだの気持ちの発信
- クレーン(大人の手を使う)=伝え方を探している途中
- 目が合いにくい子も 横並びなら共有しやすいことがある
療育アプローチ② 施設の関わりと環境
- 横並びで同じ物を見て、視線の負担を減らす
- 実物・写真・絵カードを添えて「伝わった」を増やす
- 子どもの発信を待つ 「間(ま)」 を意識してつくる
- スカーフ・ボールプールなど体操の楽しい瞬間に「もう1回?」を引き出す
- ぴょんぴの 床の色ゾーニングで「次はここ」を指さしで共有
- Low Arousal設計で刺激を抑え、人への注意を向けやすく
LEVEL 3
共同注意と意図伝達の発達基盤
専門職・ST連携/次へつなぐ
前言語期の理論的背景
言語発達は クーイング(2-3か月)から
喃語(babbling)を経て初語へ至る連続体で、
この 前言語期 に 情動共有 と
共同注意(joint attention)が芽生える。
Bates(1975)は意図的伝達を 原命令的(要求)/
原叙述的(叙述・共有)に整理し、これらは 指さし の前駆となる。
視線の交替(gaze alternation)は意図伝達の中核指標である。
ASDでは原叙述的指さし・視線交替の 非定型な発達 が早期サインとされ、
M-CHAT 等のスクリーニングや関連評価に反映される。
療育アプローチ③ アセスメントと連携
- 三項関係(子ども─物─大人)の 成立度を段階的に観察
- 要求(原命令的)だけでなく 叙述・共有の芽生えを意図的に誘発
- STへの相談指標:共同注意の乏しさ・呼名反応・前言語的要求手段の質
- TEACCH構造化で「伝える場面」を視覚的に明示し意図表出を支える
- Low Arousal設計:覚醒を整え、対人的注意を引き出す前提条件として位置づける