STAFF NOTE 19 / PART II ことばとコミュニケーション / 3段階解説

前言語期コミュニケーションってなあに?— ぜんげんごき/Preverbal Communication —

一つのテーマを レベル1(やさしく全容)/レベル2(深く実践的に)/レベル3(専門的・次へつなぐ) の3段階で。 各レベルに 療育的アプローチ を併記し、概念と現場をつなぎます。
LEVEL 1 ことばが出る前から、もう「お話」は始まっている 小学生・保護者向け/全容ざっくり

かんたんに言うと

前言語期コミュニケーションとは、ことばが出る前の「伝えたい気持ち」のやりとり のこと。 泣き声・笑顔・目を合わせる・声を出す・指をさす――こうした行動はすべて、 赤ちゃんからの 立派なメッセージ です。

ぎゅっと抱かれて笑い返す、おもちゃを指さして「見て!」と伝える。 こんな 気持ちの通い合い が、やがてことばの土台になります。

泣く・笑う 声を出す 目を合わせる 喃語 指さし はじめてのことば

療育アプローチ① 気持ちの通い合いを育てる

まずは 「伝えたら届いた」という嬉しさ を、おうちでもたっぷり。

  • 赤ちゃんの声や表情に すぐ笑顔で応える
  • 子どもが見ているものを 一緒に見て言葉にする
  • 「あー」に「あーだね」と まねっこで返す
LEVEL 2 「ことばの前のサイン」を読み解く スタッフ・支援者向け/現場で活かす

気づきたい子どものサイン

ことばが少なくても、子どもは 表情・視線・声・からだ で発信しています。 「伝わらない」のではなく 「別の方法で伝えている」 と読み替えるのが出発点です。

  • 大人と物を 交互に見る=関心を共有したいサイン
  • 手を伸ばす・引っぱる=「とって」「来て」の要求
  • 声の調子が変わる=うれしい・いやだの気持ちの発信
  • クレーン(大人の手を使う)=伝え方を探している途中
  • 目が合いにくい子も 横並びなら共有しやすいことがある

療育アプローチ② 施設の関わりと環境

  • 横並びで同じ物を見て、視線の負担を減らす
  • 実物・写真・絵カードを添えて「伝わった」を増やす
  • 子どもの発信を待つ 「間(ま)」 を意識してつくる
  • スカーフ・ボールプールなど体操の楽しい瞬間に「もう1回?」を引き出す
  • ぴょんぴの 床の色ゾーニングで「次はここ」を指さしで共有
  • Low Arousal設計で刺激を抑え、人への注意を向けやすく
LEVEL 3 共同注意と意図伝達の発達基盤 専門職・ST連携/次へつなぐ

前言語期の理論的背景

言語発達は クーイング(2-3か月)から 喃語(babbling)を経て初語へ至る連続体で、 この 前言語期情動共有共同注意(joint attention)が芽生える。

Bates(1975)は意図的伝達を 原命令的(要求)/ 原叙述的(叙述・共有)に整理し、これらは 指さし の前駆となる。 視線の交替(gaze alternation)は意図伝達の中核指標である。

ASDでは原叙述的指さし・視線交替の 非定型な発達 が早期サインとされ、 M-CHAT 等のスクリーニングや関連評価に反映される。

療育アプローチ③ アセスメントと連携

  • 三項関係(子ども─物─大人)の 成立度を段階的に観察
  • 要求(原命令的)だけでなく 叙述・共有の芽生えを意図的に誘発
  • STへの相談指標:共同注意の乏しさ・呼名反応・前言語的要求手段の質
  • TEACCH構造化で「伝える場面」を視覚的に明示し意図表出を支える
  • Low Arousal設計:覚醒を整え、対人的注意を引き出す前提条件として位置づける