STAFF NOTE 20 / PART II ことばとコミュニケーション / 3段階解説

共同注意ってなあに?— きょうどうちゅうい/Joint Attention —

一つのテーマを レベル1(やさしく全容)/レベル2(深く実践的に)/レベル3(専門的・次へつなぐ) の3段階で。 各レベルに 療育的アプローチ を併記し、概念と現場をつなぎます。
LEVEL 1 共同注意って「いっしょに見て、気持ちを分け合う」こと 小学生・保護者向け/全容ざっくり

かんたんに言うと

共同注意とは、同じものを大人と子どもがいっしょに見て、「ね、すごいね」と気持ちを分け合うこと。 犬を見つけた子が大人を振り返り、指でさして、また犬を見る——この三角のやりとりが共同注意です。

ことばが出る前から始まる、会話のいちばん最初の土台です。

目が合う 追視する 同じ方を見る 指さしを追う 指さして見せる

療育アプローチ① いっしょに見る楽しさを育てる

家庭でも、同じものを見て一緒に喜ぶ瞬間をたくさんつくりましょう。

  • 子どもが見ているものに大人も視線を合わせ「○○だね」と言葉を添える
  • 指さしには「ほんとだ!」とすぐ反応し、見せてくれたことを喜ぶ
  • シャボン玉・絵本など「思わず見せたくなる」体験を一緒に味わう
LEVEL 2 共同注意には「応える」と「自分から」の2方向がある スタッフ・支援者向け/現場で活かす

2つの方向と観察視点

応答的(応える) 大人の視線・指さしに気づいて同じ方を見る。「見てごらん」に応じられるか。
始発的(自分から) 子どもの方から振り返り、指さし、見てほしいものを共有しようとする。

「気づきにくさ」を“育ちのサイン”として読み解く:

  • 指さしの先より指そのものを見る=視線を移す芽生えの途中
  • 欲しい物を大人の手で取らせる(クレーン)=伝えたい気持ちの表れ
  • 呼んでも振り向きにくい=聞こえより注意の切り替えを見る
  • 物には夢中でも人を振り返りにくい=共有の橋をこちらから架ける

療育アプローチ② 施設での関わりと環境

  • 体操6コース:スカーフやボールプールで「見て!跳ぶよ」と注目を引き、できたら一緒に喜ぶ
  • フープ・ラダー:同じ的を二人で見て「あそこまで」と視線と動きをそろえる
  • ぴょんぴの床色ゾーニング:指さし先を色で分かりやすくし、視線移動を助ける
  • Low Arousal設計:刺激を整え、人と物の両方へ注意を向けやすくする
  • 大人は子どもの興味の対象に先回りして寄り添い、共有の起点をつくる
LEVEL 3 三項関係・社会的認知の土台と早期徴候 専門職・ST/心理連携/次へつなぐ

理論的背景と発達的意義

Joint Attentionとは、自己・対象・他者が結ばれる 三項関係の成立を指し、生後9か月頃に出現する。 Tomaselloはこれを意図共有の起点と位置づけ、 言語・心の理論へと連なる社会的認知の土台とした。

臨床ではRJA(応答的共同注意)とIJA(始発的共同注意)を区別し、 視線追従指さし(叙述/要求)の質を評価する。 IJAの乏しさはASD早期徴候として知られ、M-CHAT等のスクリーニング項目にも含まれる。

療育アプローチ③ アセスメントと連携

  • 応答的→始発的の段階的支援:まず追従が成立する文脈を整える
  • 要求の指さしから叙述(見せたい)の指さしへと広げる関わり
  • TEACCH構造化で注意の対象を視覚的に明示し、共有点をつくりやすくする
  • ST/心理への相談指標:IJAの乏しさ・前言語的コミュニケーションの遅れ(ESCS等で評価)
  • 個別支援計画に視線追従・指さしの芽生え反応を記録し経時で追う