一つのテーマを レベル1(やさしく全容)/レベル2(深く実践的に)/レベル3(専門的・次へつなぐ) の3段階で。
各レベルに 療育的アプローチ を併記し、概念と現場をつなぎます。
LEVEL 1
指さしは「ことばの前のことば」
小学生・保護者向け/全容ざっくり
かんたんに言うと
指さしとは、ことばが出る前に「これ見て」「あれちょうだい」を伝える合図のこと。
指でさしながら、子どもと大人が 同じものを一緒に見る ——これがおしゃべりの土台になります。
ふだんの「ワンワンいたよ!」と指さして振り返る瞬間も、立派なコミュニケーション。
ことばより先に、気持ちを分け合う力が育っているサインです。
目が合う▸
追視する▸
手をのばす▸
ちょうだいの指さし▸
見ての指さし▸
ことば
療育アプローチ① 共有する楽しさを育てる
まずは 「一緒に見ると楽しい」体験 をたっぷりと。
- 大人が先に指さして「あ、ワンワン!」と見せる
- 子どもが見たものに「ほんとだ、いたね」と言葉を添える
- ほしい物を少し離して置き、伝えたい気持ちを引き出す
LEVEL 2
指さしには「ちょうだい」と「見て」の2種類がある
スタッフ・支援者向け/現場で活かす
2種類の指さしと観察視点
要求の指さし=ほしい物を取ってほしい(ちょうだい)。
共有の指さし=見つけた驚きを分け合いたい(見て!)。
発達では 要求が先、共有が後に育つことが多いです。
気づきたい子どものサイン:
- ほしい物を大人の手を引いて取らせる(クレーン)=伝える芽生え
- 指さしはあるが、大人の顔を振り返らない
- 「見て」の指さしが出にくく、要求だけが多い
- 大人の指さした先ではなく、指先を見てしまう
療育アプローチ② 施設環境で「指さしたくなる」を仕掛ける
- ボールプール:埋もれた人形を一緒に発見し「あった!」を共有
- スカーフ:ふわり浮かぶ布を目で追い、指さしを引き出す
- クレーンが出たら手を取らせず、顔を見て待つ→指さしへ橋渡し
- 絵カード・実物提示で「どっち?」と選ぶ指さしを促す
- 個別支援計画に「要求→共有」のスモールステップを位置づける
LEVEL 3
前言語コミュニケーションと共同注意の基盤
専門職・ST/OT連携/次へつなぐ
理論的背景と発達指標
Bates(1975)は指さしを 原命令的指さし(protoimperative=物の要求)と
原叙述的指さし(protodeclarative=注意の叙述・共有)に分類した。
後者は 共同注意(joint attention)の成立を示す前言語コミュニケーションの中核指標である。
典型発達では原命令的が9〜12か月、原叙述的が12〜14か月頃に出現する。
ASDでは原叙述的指さしの遅れや質的差(共有目的の乏しさ・視線との協応の弱さ)が早期サインとして報告され、
M-CHAT等のスクリーニング項目にも組み込まれている。
療育アプローチ③ アセスメントと連携
- 要求/叙述・視線協応の有無を分けて記録し、共同注意の質を評価する
- 応答的共同注意(RJA)→始発的共同注意(IJA)の段階的支援
- ST連携指標:前言語期の機能的コミュニケーション手段の広がり(要求・拒否・叙述)
- OT連携指標:肩・上肢の分離運動や姿勢の安定が指さし姿勢を支える視点
- Low Arousal設計:刺激を整え、共有対象に注意を向けやすい環境をつくる