一つのテーマを レベル1(やさしく全容)/レベル2(深く実践的に)/レベル3(専門的・次へつなぐ) の3段階で。
各レベルに 療育的アプローチ を併記し、概念と現場をつなぎます。
LEVEL 1
「ことばの使い方・場の読み方」がむずかしいこと
小学生・保護者向け/全容ざっくり
かんたんに言うと
語用論的困難とは、ことばの「使い方」や「場の空気」を読むのがむずかしい こと。
単語や文法は知っていても、いつ・だれに・どう言うか の調整がうまくいかない状態です。
たとえば「暑いね」を 「窓を開けて」という遠回しのお願い と気づけず、言葉どおりに受け取ってしまう。
会話の順番や話題の切り替えにも戸惑いやすいのが特徴です。
いつ言う?
だれに言う?
どう言う?
いまの話題は?
順番は?
療育アプローチ① 言外の意味を見える化
「察してね」を求めず、ことばと気持ちを具体的に伝える 関わりを。
- 遠回しに言わず「窓を開けてね」と はっきり伝える
- 気持ちや意図を 絵・写真 で見える化して添える
- 会話の順番を「いま◯◯ちゃんの番」と言葉で示す
LEVEL 2
「困った会話」は"伝え方を育てるサイン"
スタッフ・支援者向け/現場で活かす
気づきたい子どものサイン
語用は 語彙・文法とは別の力。「よく話すのに会話がかみ合わない」子こそ見落とされやすい領域です。
次のサインを 「整えどころ」 として読み解きます。
- 冗談・皮肉・たとえを 言葉どおり に受け取る
- 一方的に話し続け、相手の番に 譲りにくい
- 話題が急に飛ぶ/文脈に合わない発言が混じる
- 相手や場面で 言い方を変える 調整がむずかしい
- あいさつ・お願い・断りなど やりとりの型 が育ち途中
療育アプローチ② 場面と型でやりとりを育てる
- 視覚スケジュールで活動の流れを示し、会話の文脈を予測可能に
- あいさつ・お願い・順番交代を サイン・絵カード で型として練習
- 「いまは聞く番/話す番」を 実物・カード で交代の合図に
- 体操の 順番待ち(ラダー・ボールプール)を自然なやりとり練習に
- 遠回しを避け、意図を スモールステップで言語化して添える
LEVEL 3
語用論・社会的コミュニケーションの理論基盤
専門職・ST/心理連携/次へつなぐ
理論的背景と他領域との接続
語用論(pragmatics)は、文脈の中での言語使用を扱う領域。話し手の意図は字義を超えて伝わり、
Grice の協調の原理(1975)と会話の含意がその基盤を説明する。
字義通り解釈の偏りは、心の理論(Theory of Mind)の発達と関連して論じられる。
DSM-5では社会的コミュニケーション症(SCD)として整理され、話者交替・文脈理解・
談話結束性の困難を中核とする。ASDとの異同(限局的興味・常同行動の有無)が鑑別の鍵となる。
評価は CCC-2(語用プロフィール)や語用論的言語評価を用い、
形式(音韻・統語)と使用(語用)を分けて捉える視点が重要。
療育アプローチ③ アセスメントと連携
- 語彙・統語の評価に加え 会話サンプルで語用を質的に分析
- ST連携指標:話者交替の頻度・話題維持・要求/叙述の機能の偏り
- 心理連携:心の理論課題・社会的推論の発達水準と併せて解釈
- TEACCH構造化で文脈を視覚的に明示し、含意への依存を減らす
- Low Arousal設計:刺激を抑え、やりとりに注意を向けやすい場を整える
- 個別支援計画に 機能的コミュニケーションの目標を段階設定