一つのテーマを レベル1(やさしく全容)/レベル2(深く実践的に)/レベル3(専門的・次へつなぐ) の3段階で。
各レベルに 療育的アプローチ を併記し、概念と現場をつなぎます。
LEVEL 1
AACは「ことば以外でも気持ちを伝える方法」
小学生・保護者向け/全容ざっくり
かんたんに言うと
AACとは、話しことばのかわりに気持ちを伝える、いろいろな方法のこと。
絵カードを指さす、写真を見せる、身ぶり(サイン)、機械のボタンを押す——どれも立派なAACです。
大切なのはたった一つ。「話せない」は「伝えたくない」ではない——ことばが出にくくても、伝えたい気持ちはちゃんとあります。
絵カード
写真
身ぶり・サイン
指さし
ボタンの機械
療育アプローチ① 伝える手段を用意する
まずは 「これを指させば伝わる」成功体験 を家庭でもたくさん。
- 「お茶/おかわり/おしまい」など好きな物の絵カードを用意
- 言葉を待つより先に、選べる写真や実物を見せる
- 指さし・身ぶりが出たら「伝わったよ」とすぐ応える
LEVEL 2
AACには「ローテク」と「ハイテク」がある
スタッフ・支援者向け/現場で活かす
2つのタイプと観察視点
ローテク=絵カード・写真・コミュニケーションブック・サイン。
ハイテク=音声が出る機械やタブレットアプリ(VOCA)。
「困った行動」を発信のサインと読み替える:
- かんしゃく・泣き=「伝える手段がない」サイン
- クレーン(手を引く)=要求を伝えようとする力の芽生え
- 大人の問いを待つだけ=自発的に発信する機会の不足
- カードを使わない=難しすぎる/場面に合っていないサイン
療育アプローチ② 施設での実装
- 視覚スケジュールと並べ、選べるカードを手の届く所に常設
- ぴょんぴの床色ゾーニングで「どこで何をするか」を視覚化
- 体操6コースでも「マット/フープ」を写真カードで自分で選ぶ
- Low Arousal設計で刺激を減らし、本人が差し出すまで待つ余白をつくる
- 個別支援計画に「どの手段で・何を伝えられたか」を記録
LEVEL 3
自発的発信の保障と多領域連携
専門職・ST/OT連携/次へつなぐ
理論的背景と他アプローチとの関係
AAC(補助代替コミュニケーション)は、音声言語を補助(augmentative)または
代替(alternative)する手段の総称。ローテク(絵カード・サイン・視線)から
ハイテク(VOCA・音声生成デバイス)まで連続的に位置づく。
中核理念は自発的発信の保障。無発語・発語困難であっても伝達意図は存在し、
「話せない=伝えたくない ではない」という前提に立つ。
要求語彙から開始する PECS はその代表的指導体系。
AACは音声言語の発達を妨げないことが知られ、むしろ発話を促す例も多い。
導入を遅らせない早期からの権利保障として捉える。
療育アプローチ③ アセスメントと連携
- ST連携:語彙選定・象徴理解(実物→写真→絵→文字)の段階評価
- OT連携:指さし・スイッチ操作の上肢運動・アクセス手段の調整
- 視線入力など身体に合わせた入力手段を多職種で検討
- TEACCH構造化と統合し、発信の場面・タイミングを視覚的に明示
- Low Arousal設計を覚醒水準の安定=発信の前提条件として裏づける
- 家庭・園・学校で同一手段を共有し、生活全般で発信を継続させる