STAFF NOTE 29 / PART II ことばとコミュニケーション / 3段階解説

マカトン・PECSってなあに?— まかとん/ぺくす/Makaton and PECS —

一つのテーマを レベル1(やさしく全容)/レベル2(深く実践的に)/レベル3(専門的・次へつなぐ) の3段階で。 各レベルに 療育的アプローチ を併記し、概念と現場をつなぎます。
LEVEL 1 ことばの代わりに「見せて・渡して」気持ちを伝える方法 小学生・保護者向け/全容ざっくり

かんたんに言うと

マカトンとPECSは、声でうまく言えない気持ちを「目で見える形」で伝える ための方法です。 マカトンは手のサインと絵で、PECSは絵カードを相手に渡して伝えます。

言いたいのに言葉が出ないときって、もどかしいですよね。
指さしや「ちょうだい」のジェスチャーも、立派な はじめのことば です。

見つめる 指さす サイン カードを渡す ことば

療育アプローチ① 伝わる喜びを家庭でも

まずは 「伝えたら叶った」という成功体験 をたっぷり。

  • 好きなおやつ・おもちゃの写真を冷蔵庫や箱に貼る
  • 渡してくれたら、すぐに「どうぞ」と応える
  • 言葉に直さず、サインや指さしもそのまま受けとめる
LEVEL 2 マカトンとPECSは「目的」と「使い方」が違う スタッフ・支援者向け/現場で活かす

2つの方法の違いと観察視点

マカトン=サイン+シンボル+音声を同時に添える「言葉を育てる」方法。 PECS=カードを相手に手渡し、自分から要求を「始める」方法。

気づきたい子どもの「伝えたい」サイン:

  • クレーン(大人の手を引く)=伝える相手がいると分かっている
  • かんしゃく・物を投げる=要求が伝わらないもどかしさ
  • 欲しい物をじっと見る・近づく=要求の芽生え
  • 大人の声かけを待つ=自発のきっかけがほしいサイン

療育アプローチ② 施設での視覚的な実装

  • 実物提示:本物→写真→絵カードへ少しずつ抽象化
  • 視覚スケジュール:1日の流れをカードで見える化
  • サイン:「おわり」「もっと」など職員間で共通化
  • スモールステップ:1枚渡し→選んで渡しへ段階化
  • ぴょんぴくれよんの 色ゾーニング でカード置き場を固定
  • 「伝わらない=方法が合っていない」と捉え直す
LEVEL 3 AAC理論・PECS6フェーズ・般化との接続 専門職・ST/OT連携/次へつなぐ

理論的背景と他アプローチとの関係

両者は音声言語を待たずに表出を支える AAC(補助代替コミュニケーション)。 マカトンサイン+シンボル+音声を多重提示し、語彙の核(コアボキャブラリー)を段階的に育てる。

PECS(絵カード交換式)は Bondy & Frost(1994)が ABAを基盤に開発。PECSの6フェーズは 交換の確立→距離と般化→弁別→文構成→応答→自発的コメントと進み、 一貫して 要求の自発(本人起点の表出)を最重視する。

評価では誤反応修正法・般化(人・場面・物への拡張)を確認。 音声言語の獲得を妨げないことは複数研究で示され、話し言葉への移行を後押しすると位置づけられる。

療育アプローチ③ アセスメントと連携

  • STと 表出意図・象徴理解の水準 を共有し導入法を選定
  • 要求の自発回数・誘導なし交換率を 個別支援計画 の指標に
  • OT連携:手指の操作性・着座姿勢がカード操作を支える土台
  • 家庭・学校へ 同一シンボルを持ち帰り般化を促進
  • TEACCH構造化と統合し、置き場と手順を視覚的に固定
  • Low Arousal設計:刺激を抑えた環境が自発表出を引き出す