STAFF NOTE 31 / PART III こころと社会性 / 3段階解説

基本的信頼感ってなあに?— きほんてきしんらいかん/Basic Trust —

一つのテーマを レベル1(やさしく全容)/レベル2(深く実践的に)/レベル3(専門的・次へつなぐ) の3段階で。 各レベルに 療育的アプローチ を併記し、概念と現場をつなぎます。
LEVEL 1 基本的信頼感って「この世界は大丈夫」という安心感 小学生・保護者向け/全容ざっくり

かんたんに言うと

基本的信頼感とは、「困ったときは誰かが助けてくれる」「この世界は安心できる」という心の土台 のこと。 赤ちゃんが泣いたら抱っこしてもらえる、お腹がすいたらごはんがもらえる—— その くり返し の中で、少しずつ育っていきます。

ぎゅっと抱きしめてもらうと安心するのも、この信頼感の働き。 泣いて呼ぶ→応えてもらえる、の積み重ねがすべての始まりです。

泣いて呼ぶ 応えてもらえる 安心する 「大丈夫」が育つ

療育アプローチ① 安心の土台をつくる

まずは 「呼べば応えてもらえる」体験 をたっぷりと。

  • 泣き・甘え・抱っこの求めには できるだけ早く応える
  • 「おはよう」「待ってたよ」と笑顔で迎える毎日のくり返し
  • うまくいかない日も「あなたは大丈夫」と関わり続ける
LEVEL 2 信頼感は「応答のくり返し」で積み上がる スタッフ・支援者向け/現場で活かす

気づきたい子どものサイン

信頼感はまだ言葉になりません。子どもの行動を「不信のサイン」ではなく「安心を確かめたいサイン」 として読み解きます。

  • 特定の大人を くり返し求める =安全基地を探している
  • 分離のときに泣く =つながりが育っている証
  • 関わりを試す行動 =「本当に受け止めてくれる?」の確認
  • 新しい遊びに踏み出せない =安心の土台がもう少しほしいサイン
  • 表情が乏しい・反応が薄い =応答のリズムを丁寧に合わせたい場面

療育アプローチ② 施設での関わりと環境

  • 担当の安定:いつも同じ大人が迎える「安全基地」を用意
  • 予測できる流れ:見通しのある一日が安心を支える
  • 体操6コース:ボールプールやマットで「受け止められる」情緒の安定体験
  • 成功体験の設計:できた瞬間を一緒に喜び「大丈夫」を積む
  • Low Arousal設計:刺激を抑えた空間で穏やかに過ごせる土台を整える
LEVEL 3 心理社会的発達の最初の課題としての信頼 専門職・心理職連携/次へつなぐ

理論的背景と発達的連続性

Erik H. Erikson心理社会的発達理論(1950)において、 乳児期(0〜1歳半)の発達課題は 基本的信頼 対 不信(Basic Trust vs. Mistrust)。 この時期に得られる徳が 希望(Hope) である。

土台を支えるのは 応答的養育(responsive caregiving)であり、 BowlbyAinsworth愛着理論 とも接続する。 一貫した応答が 安定型愛着情動調律(Stern)を育てる。

この安心感は 自律性・自己肯定感 へと連続し、後の 自己効力感 の基盤となる。

療育アプローチ③ アセスメントと連携

  • 養育者との関係性を 共同調整(co-regulation) の視点で評価する
  • 個別支援計画に「安全基地となる人・場・流れ」を明示的に位置づける
  • 心理職連携:愛着・分離不安・トラウマインフォームドケアの視点を共有
  • ST・OT連携:応答的やりとり(serve and return)を遊びの中で促す
  • 家族支援:保護者自身が安心できる関わりを支え、家庭へ橋渡しする