STAFF NOTE 32 / PART III こころと社会性 / 3段階解説

社会的参照ってなあに?— しゃかいてきさんしょう/Social Referencing —

一つのテーマを レベル1(やさしく全容)/レベル2(深く実践的に)/レベル3(専門的・次へつなぐ) の3段階で。 各レベルに 療育的アプローチ を併記し、概念と現場をつなぎます。
LEVEL 1 社会的参照は「だいじょうぶ?」と大人の顔を見ること 小学生・保護者向け/全容ざっくり

かんたんに言うと

社会的参照とは、どうしていいかわからないとき、大人の顔を見て「やっていいかな?」を確かめる こと。 はじめての場所や見慣れないものに出会うと、子どもはまず そばの大人の表情 を手がかりにします。

大人がにっこり笑えば「だいじょうぶなんだ」と進み、心配そうな顔をすれば立ち止まる。
赤ちゃんが 慣れない人を見て、お母さんの顔をふり返る のも、まさにこの働きです。

はじめて? 大人の顔を見る 笑顔ならOK 不安なら止まる

療育アプローチ① 安心の表情を届ける

子どもが迷ったとき、大人がまず穏やかな笑顔 を見せることが何よりの支えに。

  • 新しいことの前に、目を合わせて ゆっくりうなずく
  • 「だいじょうぶだよ」を表情と声でそろえて伝える
  • できたら一緒に喜び、「やってよかった」を残す
LEVEL 2 「顔を見ない」のは、手がかりの探し方を育てる途中 スタッフ・支援者向け/現場で活かす

気づきたい子どものサイン

社会的参照は、不安な場面で大人と表情を見交わす力。 うまく使えていないサインを「困った行動」ではなく 支えが必要なサイン として読み解きます。

  • 初めての活動でも大人をふり返らず、一人で突き進む/固まる
  • 大人の笑顔・困り顔の 違いに反応しにくい
  • 不安が高いと、確かめる前に その場から離れてしまう
  • 「見ていい人」が定まらず、誰の表情も手がかりにしづらい
  • こちらが先に表情を 大きく・ゆっくり見せると参照しやすくなる

療育アプローチ② 関わりと環境で支える

  • 担当を決める:まず「見れば安心できる人」を一人つくる
  • 表情を読みやすく:Low Arousal設計で刺激を減らし、大人の顔に注意が向く環境に
  • 体操6コース:バランスボードやボールプールの挑戦場面で「できた?」と顔を見交わす機会を意図的に
  • 不安そうなときは 先回りでうなずき、成功を一緒に喜んで 「顔を見る→安心できた」の回路を育てる
LEVEL 3 情動の社会的伝達と共同注意の発達基盤 専門職・心理/ST連携/次へつなぐ

理論的背景と関連概念

Social Referencing は、曖昧な状況で他者の 情動表出 を行動の手がかりとして用いる現象。 Sorce & Campos(1985) の 視覚的断崖(Visual Cliff) 実験では、 乳児が崖を渡るか否かを母の表情で判断することが示された。

発達的には 共同注意(Joint Attention) と密接で、生後9か月前後の 三項関係(自己・他者・対象)の成立を基盤とする。 自閉スペクトラムでは 情動の読み取り と参照の頻度に特性が見られ、ESCS 等で評価。 関連枠組みに co-regulationsocial biofeedback(Gergely)・DIR/Floortimeがある。

療育アプローチ③ アセスメントと連携

  • 共同注意(指さし応答・視線追従)と参照行動を セットで観察・記録
  • 曖昧な刺激を意図的に置き、大人を見るまでの間(タイミング)を見立てる
  • ST・心理職連携:前言語的な情動共有の土台、愛着・安心基地の質と参照行動の関連を共有
  • 個別支援計画に co-regulationの段階目標(共同調整→自己調整)を明記
  • 家族支援:家庭でも「先に穏やかな表情を見せる」関わりを共有