一つのテーマを レベル1(やさしく全容)/レベル2(深く実践的に)/レベル3(専門的・次へつなぐ) の3段階で。
各レベルに 療育的アプローチ を併記し、概念と現場をつなぎます。
LEVEL 1
自己調整って「自分のこころを元にもどす力」
小学生・保護者向け/全容ざっくり
かんたんに言うと
自己調整とは、ドキドキやイライラを自分でちょうどよくもどす力のこと。
車のアクセルとブレーキのように、気持ちを 上げたり落ち着けたり して、ちょうどいい状態に整えます。
泣いたあとに深呼吸して落ち着く、好きな毛布をぎゅっと握ると安心する——
これも立派な自己調整。最初は大人と一緒に、だんだん自分でできるようになります。
深呼吸する
水を飲む
そっと離れる
ぎゅっとする
休む
療育アプローチ① 安心の土台をつくる
まずは 大人が一緒に落ち着く 経験をたっぷりと。
- 「いやだったね」と気持ちに名前をつけて返す
- 落ち着ける場所・好きな物を家庭でも決めておく
- うまくもどれたら「自分でできたね」と一緒に喜ぶ
LEVEL 2
「困った行動」は「整えようとするサイン」
スタッフ・支援者向け/現場で活かす
気づきたい子どものサイン
子どもの行動の多くは、高すぎる/低すぎる覚醒をなんとか整えようとする試み。
「問題」ではなく「いまSOSを出している」と読み替えると関わりが変わります。
- 動き回る・大声=覚醒を上げて保とうとしているサイン
- ぼんやり・固まる=刺激が多すぎて引きこもるサイン
- 怒りの爆発=もどす手前で間に合わなかったサイン
- 切り替えにくさ=予測できず不安が高まっているサイン
- 身体を揺らす・噛む=感覚で自分を整えているサイン
療育アプローチ② 共同調整と施設環境
- 共同調整:大人がまず穏やかに、声・表情・呼吸を合わせる
- Low Arousal設計:音・光・人数を減らし爆発の前に整える
- 体操6コース:ボールプール・バランスボードで情緒を安定
- クールダウンの場を視覚的に用意し「逃げ場」を保障
- 見通しを 視覚スケジュール で示し不安を下げる
- もどれた瞬間を逃さず 成功体験として価値づける
LEVEL 3
共同調整から自己調整へ・実行機能との接続
専門職・OT/ST/心理連携/次へつなぐ
理論的背景と発達の道すじ
自己調整は co-regulation(共同調整) を土台に育つ。養育者が乳児の
覚醒(arousal)を外から整える経験が内在化し、やがて自力の
emotion regulation へ移行する(Vygotskyの外言→内言と同型)。
Stuart Shanker の Self-Reg は、ストレスを
5領域(生物学的・情動・認知・社会・向社会)で捉え、感情と行動の制御は
実行機能(executive function)・前頭前野とも連動すると整理する。
Polyvagal理論の自律神経状態とも接続する。
ABAが行動の随伴性を扱うのに対し、本枠組みは 覚醒と関係性の調整を起点とし、補完関係にある。
療育アプローチ③ アセスメントと連携
- Sensory Profile で感覚×覚醒の個別プロファイルを把握
- OT連携:感覚調整障害(SMD)・固有受容入力での覚醒調整を相談
- ST連携:感情ラベリング・内言の育ちを言語発達と併せて評価
- 心理職連携:愛着とトラウマ視点でco-regulationの質を読む
- 個別支援計画にストレス要因の同定と段階目標を統合
- 禁忌:罰的対応は覚醒を上げ調整を阻む。整える設計を優先