STAFF NOTE 34 / PART III こころと社会性 / 3段階解説

情動調整ってなあに?— じょうどうちょうせい/Emotion Regulation —

一つのテーマを レベル1(やさしく全容)/レベル2(深く実践的に)/レベル3(専門的・次へつなぐ) の3段階で。 各レベルに 療育的アプローチ を併記し、概念と現場をつなぎます。
LEVEL 1 情動調整って「気もちのボリュームを整える力」 小学生・保護者向け/全容ざっくり

かんたんに言うと

情動調整とは、うれしい・こわい・くやしいといった気もちの「ボリューム」を、ちょうどよい大きさに整える力のこと。 泣きそうになって深呼吸する、好きなものを思い出して落ち着く——どれも気もちの調整です。

この力は、はじめから一人でできるわけではありません。
まず 大人がいっしょに整えて、だんだん 自分で整えられる ように育っていきます。

大人が気づく いっしょに整える やり方を覚える 自分で整える

療育アプローチ① 安心の土台をつくる

気もちが大きくなった時は、まず 大人が落ち着いた声と表情 でそばにいることから。

  • 「こわかったね」と気もちに名前をつけて返す
  • 抱っこ・深呼吸・好きな場所など落ち着く方法を一緒に見つける
  • 落ち着けたら「自分で整えられたね」と認める
LEVEL 2 「困った行動」は気もちのサインとして読む スタッフ・支援者向け/現場で活かす

サインの読み解きと関わりの型

かんしゃく・固まり・離席は 「整え方がまだ見つからない」というサイン。 行動を止める前に、何のボリュームが上がっているか を読みます。

高ぶり(過覚醒) 大声・走り回る・物を投げる。刺激を 減らして 落ち着きへ。
沈み込み(低覚醒) 固まる・うずくまる・反応が薄い。安心の中で そっと 待つ。

大切な姿勢:その場で正そうとせず、まず本人と いっしょに整える(共同調整)。落ち着いてから言葉で振り返る。

療育アプローチ② 施設での実装

  • クールダウンの場所を視覚的に用意(行ける場所を写真で明示)
  • Low Arousal設計:照明・音・人数を下げ、高ぶりの種を減らす
  • 体操6コース:ボールプール・マットで身体から情緒を安定させる
  • 気もちカードで 今の大きさを一緒に見える化する
  • 成功体験を小さく設計し「整えられた」を積み重ねる
  • 個別支援計画に その子に効く落ち着き方を記録・共有
LEVEL 3 神経基盤・過程モデル・連携の視点 専門職・心理/OT/ST連携/次へつなぐ

理論的背景と他領域との接続

Emotion Regulation扁桃体 由来の情動反応を 前頭前野 が調整する トップダウン制御 と、感覚・身体由来の ボトムアップ 喚起の相互作用として捉えられる。

Gross過程モデル は状況選択・注意配分・再評価・反応調整という時系列で介入点を整理する。 発達初期は養育者との 共同調整(co-regulation) が自己調整の足場となる。

状況選択 注意の配分 認知的再評価 反応の調整

療育アプローチ③ アセスメントと連携

  • 感情のラベリング(言語化)で前頭前野の調整を支える(affect labeling)
  • 覚醒水準の評価に Sensory Profile、感覚×情動の相互影響をOTと共有
  • ボトムアップ調整:前庭・固有受容入力(体操6コース)で生理的安定を整える
  • STと連携し感情語彙・内受容感覚への気づきを育てる
  • 心理職連携:トラウマ反応・愛着の視点を加味した個別支援計画
  • 関連枠組:Floortime(情動の相互交流)・SI理論との接続を意識する