一つのテーマを レベル1(やさしく全容)/レベル2(深く実践的に)/レベル3(専門的・次へつなぐ) の3段階で。
各レベルに 療育的アプローチ を併記し、概念と現場をつなぎます。
LEVEL 1
心の理論は「相手の心を想像する力」のこと
小学生・保護者向け/全容ざっくり
かんたんに言うと
心の理論とは、「相手は自分とはちがうことを考えている」と想像する力のこと。
人の気持ちは目に見えないけれど、「うれしいのかな」「知らないのかな」と 心の中を思いえがく 働きです。
この力は、おしゃべりや体の動きと同じように、遊びのなかでゆっくり育っていきます。
すぐに上手にならなくても、それはあたりまえのこと。
うれしいかな?
かなしいかな?
知ってるかな?
びっくりするかな?
療育アプローチ① 気持ちを言葉にして見せる
大人が 気持ちを言葉にして実況 すると、心の世界の見本になります。
- 「ママは今うれしいな」と自分の気持ちを声に出す
- 絵本で「この子はどんな気持ちかな?」と一緒に考える
- かくれんぼ・いないいないばあで「見える・見えない」を楽しむ
LEVEL 2
「自分と相手の見え方はちがう」がわかる段階
スタッフ・支援者向け/現場で活かす
気づきたい子どものサイン
心の理論が育つ途中の子は、「相手も自分と同じことを知っている」前提で動きがちです。
困った行動に見える姿も、育ちの途中のサインとして読み解きます。
- 「あれ取って」と言うが、相手に何が見えているか伝わらない
- かくれんぼで顔だけ隠して「見つからない」と思う=視点取得のサイン
- ネタバレを気にせず結末を先に言う=相手の知識を想像中のサイン
- 友だちの表情より自分の関心が先に立ちやすい
- うそ・冗談・からかいの意図が読み取りにくい
療育アプローチ② 遊びのなかで視点を重ねる
- 共同調整:まず大人が安心の土台になり、気持ちを一緒に整える
- ごっこ遊び・お店屋さんで 役割の視点 を体験する
- 体操6コースの順番待ちで「次は○○くんの番」と他者を意識
- 表情カード・気持ち温度計で 見えない心を見える化(TEACCH的視覚支援)
- 「わざと?うっかり?」を一緒に考え、意図の読み解きを支える
- できた場面を逃さず 成功体験 として言語化する
LEVEL 3
誤信念課題・発達段階・ASDとの関連
専門職・心理職/ST連携/次へつなぐ
理論的背景と発達のものさし
心の理論(Theory of Mind) は Premack & Woodruff(1978) がチンパンジー研究で提唱し、
Baron-Cohen(1985) が 誤信念課題(サリーとアン課題) でヒトの発達を検証した概念。
他者の信念・意図・知識を推論する メンタライジング の中核をなす。
定型発達では 一次の信念(「彼はこう思っている」)が4–5歳前後、
二次の信念(「彼は彼女がこう思うと思っている」)が6–7歳前後に成立する。
共同注意・パーソンパーマネンス がその前駆段階とされる。
ASD では誤信念課題の通過に遅れや迂回(言語による補償)がみられることがあるが、
これは 欠如ではなく異なる認知特性として捉える(ニューロダイバーシティ視点)。
療育アプローチ③ 評価と連携の視点
- 評価は 誤信念課題 単独でなく、共同注意・語用論・文脈理解と併せて多面的に
- ST連携:語用論(pragmatics)・会話の含意理解の評価と支援を共有
- 心理職連携:メンタライジングを軸に情緒・愛着の発達を見立てる
- Floortime的な情動交流と、TEACCH的な視覚支援を 子どもに合わせて統合
- Low Arousal設計:覚醒が安定して初めて他者理解の余地が生まれる前提を共有
- 個別支援計画に 視点取得の芽生え反応 を段階目標として記載する