一つのテーマを レベル1(やさしく全容)/レベル2(深く実践的に)/レベル3(専門的・次へつなぐ) の3段階で。
各レベルに 療育的アプローチ を併記し、概念と現場をつなぎます。
LEVEL 1
役割取得は「相手の気持ちになってみる」力
小学生・保護者向け/全容ざっくり
かんたんに言うと
役割取得とは、「もし自分がこの人だったら、どう感じるかな」と想像してみる力のこと。
おもちゃを取られた友だちが泣いているとき、「悲しいんだな」と相手の側に立って考えられることです。
この力はいきなり育つのではなく、「自分」と「相手」の見え方はちがうと気づくところから、
少しずつ広がっていきます。
自分の気持ち▸
相手にも気持ちがある▸
見え方はちがう▸
相手の側で考える
療育アプローチ① 気持ちに名前をつける
まずは 自分の気持ちがわかる 体験を、家庭でもたっぷりと。
- 「うれしいね」「くやしかったね」と気持ちを言葉にして返す
- 絵本やごっこ遊びで「この子はどんな気持ちかな?」と一緒に考える
- 正解を急がせず、子どもなりの見方をまず受け止める
LEVEL 2
「わがまま」ではなく「まだ見え方が一つ」のサイン
スタッフ・支援者向け/現場で活かす
気づきたい子どものサイン
自分の視点と相手の視点を 同時に持つのは、とても高度な力。
うまくいかない場面は「自分勝手」ではなく、「まだ視点が一つに見えている」サインと読み替えます。
- 自分の見たもの・知っていることを、相手も同じだと思っている
- 順番ゆずり・物の貸し借りでつまずきやすい
- 勝ち負けや「自分が正しい」にこだわり、折り合いが難しい
- 相手が嫌がっていても気づきにくく、悪気はない
- 「ごめんね」と言えても、なぜ相手が困ったかは結びつきにくい
療育アプローチ② 安心の中で視点を交換する
- 共同調整:まず大人が穏やかに寄り添い、落ち着いてから一緒に振り返る
- ごっこ・役割交代遊び:お店屋さん等で「売る人・買う人」の両側を体験
- 成功体験の設計:「貸せた」「待てた」場面を具体的に言葉で価値づける
- 体操6コース:順番・応援のある活動で「相手を見る」を遊びの中で育てる
- トラブルは責めずに「相手はどう見えたかな」を一緒に絵や言葉で整理する
LEVEL 3
役割取得の発達段階と社会的認知の基盤
専門職・心理/ST連携/次へつなぐ
理論的背景と発達の道筋
役割取得(perspective-taking)は、自他の視点を区別し協応させる
社会的認知の中核。Selman(1980)は
役割取得の段階を、自他未分化な水準0から、相互的・社会慣習的視点をとる水準4へと
発達するモデルとして整理した。
基盤には 心の理論(Theory of Mind)の発達(誤信念課題の通過)があり、
そこに 共感(empathy)の情動的側面が重なって
社会的問題解決(social problem-solving)へと展開する。
ASDでは認知的視点取得の質的差異が指摘される。
関連する介入には SST・コミック会話・Floortime等があり、
いずれも情動の安定を土台に据える点で共通する。
療育アプローチ③ アセスメントと連携
- 誤信念課題・対人葛藤場面の語りから 現在の役割取得水準を見立てる
- 水準に合わせ、視点取得を スモールステップで課題設定する
- ST連携:語用論(会話の文脈・含意理解)と視点取得を併せて評価
- 心理職連携:共感・自己制御・愛着の安定を情緒的土台として支える
- Low Arousal設計:刺激を抑えた環境が「相手に注意を向ける」余白を生む
- 個別支援計画に「対人目標」を強みベースで具体的に記述する