STAFF NOTE 40 / PART IV 認知と学習 / 3段階解説

実行機能ってなあに?— じっこうきのう/Executive Function —

一つのテーマを レベル1(やさしく全容)/レベル2(深く実践的に)/レベル3(専門的・次へつなぐ) の3段階で。 各レベルに 療育的アプローチ を併記し、概念と現場をつなぎます。
LEVEL 1 実行機能は「やることを段取りする心の司令塔」 小学生・保護者向け/全容ざっくり

かんたんに言うと

実行機能とは、「やりたいこと・やるべきこと」を順番に進める心のはたらき。 目標を決めて、手順を考えて、最後までやりとげる――その 段取りの力 です。

たとえば「朝の支度」も実行機能の出番。
何をするか思い出す(顔を洗う・着替える)
順番に進める(途中で遊びたくても、ぐっとがまん)

目標を持つ 手順を考える 始める やり続ける できた!

療育アプローチ① 見通しの土台をつくる

まずは 「次に何をするか目で見てわかる」安心 から始めます。

  • やることを 絵や写真の順番表 にして貼る
  • 大きな用事は「小さな1歩」に分けて見せる
  • できたら一緒にチェック印をつけ、達成を味わう
  • がまんできた瞬間を「待てたね」と言葉にする
LEVEL 2 実行機能は「3つの力」でできている スタッフ・支援者向け/現場で活かす

3つの中核と観察視点

抑制 やりたい衝動を止め、いま必要なことを選ぶ力。
記憶の保持 指示や手順を「頭にとどめて使う」力。
切り替え 状況に応じてやり方を変える柔らかさ。

「困った行動」を「○○のサイン」と読み替える:

  • 指示を忘れる=記憶を保つのが苦手なサイン
  • 切り替えで荒れる=予定変更がつらいサイン

療育アプローチ② 施設での実装

  • TEACCH:時間と手順を視覚化し、記憶の負担を環境が肩代わり
  • スモールステップ:課題を分け「できる単位」で達成体験を
  • 体操コース:ラダーの順番・フープで止まる→認知運動課題に
  • 切り替え:終わりと次を予告し、移行を穏やかに整える
LEVEL 3 前頭前野・自己制御・他アプローチとの接続 専門職・OT/ST連携/次へつなぐ

理論的背景と神経基盤

実行機能(遂行機能)は主に 前頭前野 を基盤とする認知制御系。 Miyakeら(2000)は中核を 抑制ワーキングメモリ認知的柔軟性 の3要素に整理し、これらが プランニング を支えるとした。

Barkley(1997)はADHDを「実行機能=自己制御の遅れ」と捉え、 行動抑制を中核に据えた。発達的には前頭前野の成熟に伴い、児童期から青年期へ漸進的に発達する点が重要。

療育アプローチ③ アセスメントと連携

  • BRIEFやDN-CASなどで 領域別プロフィール を把握する
  • 外的足場(視覚化)→内的方略(自己教示)への 段階的移行
  • 感覚統合・覚醒水準が制御の前提:Low Arousal設計で土台を整える
  • OT/ST連携指標:手順理解の遅れ・行動の組織化・言語による自己調整