一つのテーマを レベル1(やさしく全容)/レベル2(深く実践的に)/レベル3(専門的・次へつなぐ) の3段階で。
各レベルに 療育的アプローチ を併記し、概念と現場をつなぎます。
LEVEL 1
実行機能は「やることを段取りする心の司令塔」
小学生・保護者向け/全容ざっくり
かんたんに言うと
実行機能とは、「やりたいこと・やるべきこと」を順番に進める心のはたらき。
目標を決めて、手順を考えて、最後までやりとげる――その 段取りの力 です。
たとえば「朝の支度」も実行機能の出番。
① 何をするか思い出す(顔を洗う・着替える)
② 順番に進める(途中で遊びたくても、ぐっとがまん)
目標を持つ▸
手順を考える▸
始める▸
やり続ける▸
できた!
療育アプローチ① 見通しの土台をつくる
まずは 「次に何をするか目で見てわかる」安心 から始めます。
- やることを 絵や写真の順番表 にして貼る
- 大きな用事は「小さな1歩」に分けて見せる
- できたら一緒にチェック印をつけ、達成を味わう
- がまんできた瞬間を「待てたね」と言葉にする
LEVEL 2
実行機能は「3つの力」でできている
スタッフ・支援者向け/現場で活かす
3つの中核と観察視点
抑制
やりたい衝動を止め、いま必要なことを選ぶ力。
記憶の保持
指示や手順を「頭にとどめて使う」力。
切り替え
状況に応じてやり方を変える柔らかさ。
「困った行動」を「○○のサイン」と読み替える:
- 指示を忘れる=記憶を保つのが苦手なサイン
- 切り替えで荒れる=予定変更がつらいサイン
療育アプローチ② 施設での実装
- TEACCH:時間と手順を視覚化し、記憶の負担を環境が肩代わり
- スモールステップ:課題を分け「できる単位」で達成体験を
- 体操コース:ラダーの順番・フープで止まる→認知運動課題に
- 切り替え:終わりと次を予告し、移行を穏やかに整える
LEVEL 3
前頭前野・自己制御・他アプローチとの接続
専門職・OT/ST連携/次へつなぐ
理論的背景と神経基盤
実行機能(遂行機能)は主に 前頭前野 を基盤とする認知制御系。
Miyakeら(2000)は中核を 抑制・ワーキングメモリ・
認知的柔軟性 の3要素に整理し、これらが プランニング を支えるとした。
Barkley(1997)はADHDを「実行機能=自己制御の遅れ」と捉え、
行動抑制を中核に据えた。発達的には前頭前野の成熟に伴い、児童期から青年期へ漸進的に発達する点が重要。
療育アプローチ③ アセスメントと連携
- BRIEFやDN-CASなどで 領域別プロフィール を把握する
- 外的足場(視覚化)→内的方略(自己教示)への 段階的移行
- 感覚統合・覚醒水準が制御の前提:Low Arousal設計で土台を整える
- OT/ST連携指標:手順理解の遅れ・行動の組織化・言語による自己調整