STAFF NOTE 54 / PART V 発達障害の理解 / 3段階解説

愛着障害との鑑別ってなあに?— あいちゃくしょうがいとのかんべつ/Differentiating Attachment Disorders —

一つのテーマを レベル1(やさしく全容)/レベル2(深く実践的に)/レベル3(専門的・次へつなぐ) の3段階で。 各レベルに 療育的アプローチ を併記し、概念と現場をつなぎます。
LEVEL 1 「生まれつきの特性」と「育ちの中で生まれた不安」を分けて見る 小学生・保護者向け/全容ざっくり

かんたんに言うと

愛着とは、こわい時・不安な時に「この人のところに戻れば大丈夫」と思える、 子どもと大人の心のきずなのこと。これがうまく結べないと、 人との距離感がつかみにくくなることがあります。

にているように見えても、生まれつきの特性(自閉スペクトラム)育ちの中の不安(愛着)ではなかみが違います。どちらも「その子が悪い」のではなく、 決めつけず、まわりが安心できる関係と環境を整えることが出発点です。

療育アプローチ① 安心の土台をつくる

  • 「困ったらここに戻ればいい」と思える安心の人・場所を一つ決める
  • 笑顔・声・タッチや「行ってきます/ただいま」など、同じ関わりをくり返し予測できるようにする
  • 抱っこや手つなぎは本人のペースで。無理に求めない
LEVEL 2 「人との距離感」のサインを、特性か関係かで読み解く スタッフ・支援者向け/現場で活かす

気づきたい子どものサイン

  • 誰にでも無警戒に近づく/知らない人にもついていく
  • 逆に、大人に甘えられず・頼れず一人で抱える
  • 関わりが安定せず、近づいたり強く拒んだりが揺れる
  • 関係が新しくなると大きく変わる(環境で表れ方が動く)

読み解きの視点:同じ「目が合いにくい」でも、特性なら場面を問わず一貫、 関係の不安なら相手や状況で変わりやすい決めつけず観察を記録して持ち寄ります。

療育アプローチ② 施設での関わりと環境

  • 担当を固定し「いつもの人・流れ」で安心を渡す。「試し行動」も関係を確かめるサインとして穏やかに受けとめる
  • 視覚スケジュールで見通しを示し、不安からの行動を減らす
  • Low Arousal設計で刺激を抑え、興奮や混乱を起こしにくく
  • 体操6コースのボールプール・マットで安心して身を委ねる体験を
LEVEL 3 RAD・DSEDとASDの鑑別と、慎重な見立て 専門職・医療/心理連携/次へつなぐ

診断基準と鑑別の枠組み

DSM-5は愛着の困難を2類型で記載する。 反応性アタッチメント症(RAD)は抑制的な引きこもり、 脱抑制型対人交流症(DSED)は無警戒な接近が特徴で、いずれも 不十分な養育(insufficient care)の存在が診断要件となる。

ASDとの鑑別点は社会的相互性の一貫性にある。ASDは限局的興味・常同性を伴い 状況を超えて一貫するが、愛着の困難は安全基地(secure base / Bowlby)の不全と 養育環境・トラウマ背景を反映し関係性で変動しうる(併存もある)。 評価はStrange Situationや養育歴を含め多面的に行い、安易なラベリングを避ける慎重さが倫理的前提となる。

療育アプローチ③ アセスメントと連携

  • 発達歴・養育環境・関わりの変動を時系列で整理し見立てを共有
  • 診断確定は医療・心理に委ね、施設は環境調整と安全基地の提供に徹する
  • TEACCH構造化×安定した関係で、予測可能性と安心を同時に担保
  • トラウマ背景が疑われる場合はトラウマインフォームドケアの視点で連携
  • 児相・医療・心理との多職種連携で、家族を含めた支援計画へつなぐ