STAFF NOTE 55 / PART V 発達障害の理解 / 3段階解説

併存と二次障害ってなあに?— へいぞんとにじしょうがい/Comorbidity and Secondary Disorders —

一つのテーマを レベル1(やさしく全容)/レベル2(深く実践的に)/レベル3(専門的・次へつなぐ) の3段階で。 各レベルに 療育的アプローチ を併記し、概念と現場をつなぎます。
LEVEL 1 特性は「重なる」ことがある/つらさは「あとから」防げる 小学生・保護者・本人向け/全容ざっくり

かんたんに言うと

人は いくつもの特性をあわせ持つ ことがあります。これが 「併存」。 たとえば「集中の仕方が独特」と「動きたい気持ちが強い」が一緒にあるのは、ごく自然なことです。

いっぽう 「二次障害」 は、特性そのものではなく、まわりとうまく合わなかった経験が重なって、 あとから出てくる心のしんどさ。「どうせ自分はダメ」という気持ちや、行きしぶり・不安などです。 これは"防げる"のがいちばん大切なところ。

わかってもらえた できた! 安心できる場所 ここにいていい

療育アプローチ① 安心と「できた」を貯める

家庭でも、叱る回数より「できた」を見つける回数を増やすことから。

  • うまくいったら その場ですぐ 言葉と笑顔で返す
  • 難しいことは 小さく分けて、一つできたら一緒に喜ぶ
  • 「困った子」ではなく 「困っている子」 として見る
  • 家を 安心して休めるホームベース に保つ
LEVEL 2 困りごとは「二次障害のサイン」かもしれない スタッフ・支援者向け/現場で活かす

気づきたいサインと読み替え

特性は重なって現れるのが むしろ普通。大切なのは、行動の奥にある 「合わなさ」や「疲れ」 に早く気づくこと。

  • 登園・登校をしぶる → 環境が刺激過多のサイン
  • 急に怒る・固まる → 「もう限界」のSOSのサイン
  • 「やらない」と言う → 失敗を重ねた自信低下のサイン
  • 表情が乏しい・眠れない → 不安や抑うつの芽のサイン

療育アプローチ② 予防=環境を先に整える

  • TEACCH構造化:見通しを視覚化し「わからない不安」を減らす
  • Low Arousal設計:音・光を抑え、心身が荒れる前に静める
  • 体操6コース:成功しやすい課題で「できた」を毎回設計する
  • 叱責の連鎖を断ち、肯定的注目へ職員間で統一
  • 記録を共有し 「崩れる前の兆候」 をチームで先回り
LEVEL 3 併存症の理解と二次障害の予防的支援 専門職・医療連携/次へつなぐ

診断基盤と二次障害のメカニズム

DSM-5 はASD・ADHD等の comorbidity(併存) を明示的に許容しており、 ASDと ADHDDCD(発達性協調運動症)、 限局性学習症 の重複は高頻度。併存は欠陥の累積ではなく特性の布置である。

一方 二次障害 は一次特性と環境の ミスマッチ の蓄積で生じる 不安症抑うつ不登校・ 自己肯定感の低下であり、予防可能な領域である。鍵は早期の環境調整と 成功体験の意図的設計にある。

療育アプローチ③ 評価と医療連携

  • 併存評価:ADOS-2Conners 3Sensory Profile を多面的に
  • 二次障害の早期把握に 自己肯定感・QOL の経時モニタリング
  • 合理的配慮と 個別支援計画 に予防目標を明記する
  • OT/PT/STと連携し、協調運動や表出の 「できなさ」由来の挫折 を軽減
  • 抑うつ・不眠が疑われれば 児童精神科 へ早期につなぐ