STAFF NOTE 57 / PART VI 療育の方法論 / 3段階解説

視覚支援ってなあに?— しかくしえん/Visual Support —

一つのテーマを レベル1(やさしく全容)/レベル2(深く実践的に)/レベル3(専門的・次へつなぐ) の3段階で。 各レベルに 療育的アプローチ を併記し、概念と現場をつなぎます。
LEVEL 1 視覚支援は「言葉のかわりに目で見せる」こと 小学生・保護者向け/全容ざっくり

かんたんに言うと

視覚支援とは、伝えたいことを「目で見てわかる形」にして見せる こと。 言葉は耳に入ってもすぐ消えてしまいますが、絵や写真は そこに残って何度でも確認できます

おうちでも自然に使っています。
冷蔵庫に貼った 「やることリスト」 や、料理の レシピ写真 も立派な視覚支援です。

えカード しゃしん もじ・メモ スケジュール表

療育アプローチ① 見せてから伝える

  • 口で言う前に 写真や絵カード を一緒に見せる
  • 朝の支度を 順番の絵 にして玄関に貼る
  • 「あと◯回」「これで終わり」を 指で見える化
  • うまく伝わったら、その絵を「お気に入り」として残す
LEVEL 2 視覚支援は「抽象度」を子どもに合わせる スタッフ・支援者向け/現場で活かす

4つの抽象度レベル

① 実物・具体物 最も伝わりやすい。本物のコップ=「お茶の時間」。
② 写真 その子の持ち物・場所を撮る。具体性が高く誤解が少ない。
③ 絵・イラスト 汎用性が高い。線がシンプルなほど伝わる。
④ 文字 読字が育った子へ。写真+文字の併記から始める。

読みのサインとして:カードを払いのける・見ない時は 抽象度が高すぎる 合図。一段下げて実物や写真に戻す。

療育アプローチ② 施設での実装

  • 場所:ぴょんぴの床長尺シート色ゾーンに合わせ、エリア表示も同色で統一
  • 時間:体操6コースを写真カードで「今→次」と提示
  • 手順:マットのくま歩き等を 絵の手順書 にして掲示
  • 余白:1枚1情報。背景を減らし主役だけを際立たせる
  • その子専用のカードを 個別支援計画 に綴じて共有
LEVEL 3 視覚優位特性と構造化理論への接続 専門職・OT/ST連携/次へつなぐ

理論的背景と評価の視点

視覚支援の根拠は、自閉スペクトラム症にしばしば見られる 視覚優位(聴覚情報より視覚情報の処理が優位)にある。 消えゆく聴覚刺激を 恒常的な視覚刺激 に置換することで、 ワーキングメモリ負荷を下げ予測可能性を高める。

TEACCH視覚的構造化では、 明瞭性・組織化・視覚的指示が三要素。提示物の 抽象度(実物→写真→線画→文字)は PEP-3 等の評価で把握した認知・象徴機能の水準に整合させる。

ST領域では AACPECS と地続きで、 表出コミュニケーションの足場にもなる。

療育アプローチ③ アセスメントと連携

  • STと 象徴理解の段階を共有し、提示物の抽象度を決定
  • OTと 視覚認知・走査(スキャニング)の特性を確認し配置を調整
  • 視覚スケジュールを 表出(要求カードの手渡し)へ橋渡し
  • Low Arousal設計:視覚刺激も最小化し、主たる情報だけを残す
  • 誤解への対処:「視覚支援=絵カード」ではなく、個別性に基づく情報の見える化の総体