STAFF NOTE 62 / PART VI 療育の方法論 / 3段階解説

感覚統合療法ってなあに?— かんかくとうごうりょうほう/Sensory Integration Therapy —

一つのテーマを レベル1(やさしく全容)/レベル2(深く実践的に)/レベル3(専門的・次へつなぐ) の3段階で。 各レベルに 療育的アプローチ を併記し、概念と現場をつなぎます。
LEVEL 1 感覚統合療法は「からだの感覚を遊びで整える」こと 小学生・保護者向け/全容ざっくり

かんたんに言うと

感覚統合療法とは、たくさんの感覚を脳が「ちょうどよく」まとめる力を、遊びを通して育てる 関わりです。 ブランコでゆれる、跳ねる、ぎゅっと押される——そんな からだ全体の感覚 がうまくまとまると、 姿勢が安定したり、気持ちが落ち着いたりします。

大切なのは 「本人が楽しい!」と思える遊び であること。やらされるのではなく、 自分から挑戦したくなる遊びの中でこそ、力は自然に育ちます。

ゆれる 跳ねる ぎゅっ のぼる ぶら下がる

療育アプローチ① 楽しい感覚あそびから

まずは 本人が「もう1回!」と思える遊び を一緒に。

  • ブランコ・トランポリン・布のハンモックでゆれを楽しむ
  • 毛布でぐるぐる巻き・ぎゅっと抱っこで「押される心地よさ」を
  • クッションの山にダイブ・よじのぼりで全身を使う
  • 家庭でも「楽しそう?怖そう?」を見ながら無理なく
LEVEL 2 3つの感覚と「ちょうどいい挑戦」を見る スタッフ・支援者向け/現場で活かす

土台となる3つの感覚

前庭感覚 ゆれ・回転・傾き。姿勢とバランス、覚醒の調整に関わる。
固有覚 筋肉・関節の感覚。力加減と「ぎゅっ」で気持ちを整える。
触覚 触れる・触れられる感覚。安心感や警戒のもとになる。

読み替えの視点:「落ち着きがない」は 感覚を求めるサイン、 「触られるのを嫌がる」は 感覚に敏感なサイン。困りごとではなく整え方のヒントとして読む。

療育アプローチ② 体操6コースで実装

  • バランスボード:ゆれを与えて前庭感覚を心地よく刺激
  • ボールプール:全身が包まれ固有覚・触覚をたっぷりと
  • ラダー:跳ぶ・またぐで「ちょうどいい挑戦」を段階調整
  • フープ:くぐる・のぼるで姿勢と身体の地図を育てる
  • 本人が選び・成功する設計に。難しすぎ/易しすぎは避ける
LEVEL 3 Ayres理論・適応反応・OT専門性との接続 専門職・OT/PT/ST連携/次へつなぐ

理論的背景と他アプローチとの関係

1970年代に作業療法士 A. Jean Ayres が体系化した Sensory Integration 理論に基づく。中核は 前庭覚固有覚触覚 の統合と、 子どもが環境に主体的に対応して生み出す 適応反応(adaptive response)

原理は 遊び中心(child-directed) と、能力よりわずかに高い課題を設定する just right challenge。介入は 感覚調整(sensory modulation) の評価を前提とし、 Sensory Profile 等で感覚プロファイルを把握する。ABAやDIR/Floortimeとは補完関係にある。

療育アプローチ③ アセスメントと連携

  • 感覚探求/回避/低登録の プロファイル別 に活動を設計
  • 体操6コースを「適応反応を引き出す感覚メニュー」として個別支援計画へ統合
  • Low Arousal設計=過剰刺激を減らし、感覚調整の土台を整える環境づくり
  • OT/PTへの相談指標:感覚過敏・両側統合や動作企図(praxis)の未熟さ
  • STとの連携:感覚調整の安定が、注意・発声・やりとりの前提になる視点